化粧品GMP(ISO22716)の全体像と17の要求事項を体系的に理解し、高品質でリスクのないOEMパートナー選びを実現する。
1983年生まれ。福岡県出身。大学卒業後、株式会社東北新社に入社。CM制作を主な業務として化粧品などの広告を学ぶ。その後、27歳で故・松岡康雄(ローソン代表取締役会長)から経営の道を示され、化粧品メーカーを立ち上げる。インバウンド市場に注目し、在日外国人に対し人材育成プログラムを提案。全国のドラッグチェーンや免税店などへ美容部員を派遣し、累計2,000人以上の美容部員を教育、現場へ送り出してきた。2018年に、化粧品開発会社である『株式会社スマイリーメソッド』を立ち上げ、原料の研究から製品化までワンストップでOEMを行なっている。
詳しいプロフィールはこちら ▶︎化粧品ビジネスへの参入を検討される際、OEMメーカーの紹介ページで必ずと言っていいほど目にするのが「GMP」や「ISO22716」という言葉です。
「名前は聞いたことがあるけれど、実際、何のために必要なの?」
「小規模なブランドでも、GMPにこだわるべき?」
「医薬品GMPとは何が違うの?」
そんな疑問を抱く経営者様も少なくありません。
ですが、化粧品事業を長く、安全に続けたいのであれば、GMPの理解は「必須」です。
この記事では、化粧品GMP(ISO22716)の基本から17の要求事項、取得メリット、OEMメーカー選びで見るべきポイントまで、現役の化粧品メーカー経営者の視点で分かりやすく解説します。
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化粧品GMPとは?「安心・安全」を保証する製造ルール
GMPとは、「Good Manufacturing Practice」の略で、日本語では「適正製造規範」と呼ばれます。
一言でいうと、「誰が、いつ、どこで作っても、同じように高品質で安全な製品ができるためのルール」のことです。
化粧品は肌に直接触れるものです。もし、製造現場にチリや埃が混じっていたり、作業者によって成分の配合量がバラバラだったりしたらどうでしょうか?最悪の場合、健康被害や大規模な自主回収という、経営を揺るがす事態に発展しかねません。
そうしたリスクを未然に防ぎ、消費者に届けられる製品の「一定の品質」を保証するのがGMPなのです。
化粧品GMPの国際規格「ISO22716」とは
化粧品GMPにおいて、現在世界的に標準となっているのが「ISO22716」という国際規格です。
ISO22716は、2007年に国際標準化機構(ISO)によって発行された化粧品の製造管理・品質管理に関する国際規格で、化粧品の生産・管理・保管・出荷に関する具体的な要求事項を定めています。
日本では2008年に日本化粧品工業連合会(粧工連)が「適正製造規範(化粧品GMP)」の自主基準として採用しました。
日本国内では、医薬品のような法的な「GMP省令」による強制力は化粧品にはありませんが、「ISO22716を取得・遵守している=業界のトップクラスの安全基準をクリアしている」という強力な信頼の証になります。
化粧品GMPの対象と適用範囲
ISO22716が対象とする製品と、適用される工程は以下の通りです。
| 区分 | 内容 |
| 対象製品 | 化粧品、医薬部外品(新指定・新範囲医薬部外品を除く)、口中清涼剤、殺虫剤(忌避剤を除く)、殺鼠剤、衛生用綿類 |
| 適用範囲 | 化粧品の生産・管理・保管・出荷に関する業務 |
| 適用外 | 研究開発行為、最終製品の営業・物流、従業員の労働安全・環境保全 |
化粧品GMP(ISO22716)の3つの基本原則
化粧品GMPは、以下の3つの基本原則をベースに、製造現場のあらゆる活動を規定しています。
原則①:ヒューマンエラーを最小限化する
製造工程における人的ミス(配合量の間違い、記入漏れ、取り違えなど)を徹底的に排除することが最優先されます。
順書の整備、教育訓練、作業記録の義務化、ポカヨケ(ミス防止装置)などにより、「人によって差が出ない」体制を構築します。
原則②:製品の汚染を防止する
異物の混入、原料の取り違え、微生物の繁殖などを防ぐため、作業エリアの衛生管理、設備の洗浄、原料・製品の適切な保管が求められます。
肌に直接触れる化粧品だからこそ、微細な異物ですら大きなトラブルに繋がり得ます。
原則③:高品質な製品を一貫して保証する
「今日の製品」も「1年後の製品」も、同じ品質で作られることを保証します。
規格の明確化、検査工程の標準化、ロット管理、トレーサビリティの確保、バリデーション(工程適格性の検証)、継続的な改善活動を通じて、ブランドとしての品質担保を実現します。
化粧品GMPの17の要求事項(完全リスト)
ISO22716では、先ほどの3原則を実現するための具体的な17の要求事項が定められています。OEMメーカーの品質管理レベルを判断する上で、どこまで対応できているかの指標になります。
| No. | 要求事項 | 概要 |
| 1 | 適用範囲 | 規格が対象とする範囲の明確化 |
| 2 | 用語及び定義 | 規格内で使用される用語の統一 |
| 3 | 従業員 | 衛生管理・教育訓練・健康チェック体制 |
| 4 | 構造設備 | 工場の構造・レイアウト・清掃体制 |
| 5 | 機器 | 製造機器の選定・保守・校正 |
| 6 | 原料及び包装材料 | 購買管理・受入検査・保管条件 |
| 7 | 生産 | バッチ記録・工程管理・異物混入防止 |
| 8 | 最終製品 | 出荷判定・保管・出荷管理 |
| 9 | 品質管理試験室 | 検査項目・試験方法・記録管理 |
| 10 | 規格外品の処理 | 不適合品の識別・隔離・処置 |
| 11 | 廃棄物 | 廃棄物の分類・処理・記録 |
| 12 | 委託 | 外部委託先の選定・評価・管理 |
| 13 | 逸脱 | 通常と異なる事象の記録・対応 |
| 14 | 苦情及び回収 | 苦情受付・原因調査・回収手順 |
| 15 | 変更管理 | 処方・工程変更時の影響評価 |
| 16 | 内部監査 | 定期的な自主点検の実施 |
| 17 | 文書化 | 手順書・記録の作成・保管 |
これらの要求事項は、大きく分けて「GMPハード(構造設備に関する要件)」と「GMPソフト(管理体制に関する要件)」の2軸で構成されています。
GMPハードとGMPソフトの違い
| 区分 | 内容 | 具体例 |
| GMPハード | 構造設備・機器など物理的な要件 | クリーンルーム、洗浄可能な床・壁、虫害対策設備、温湿度管理 |
| GMPソフト | 管理体制・手順・文書など運用面の要件 | 標準作業手順書(SOP)、教育訓練記録、製造バッチ記録、内部監査 |
どちらか一方だけでは化粧品GMPを満たしていると言えません。立派な設備(ハード)があっても、記録や手順(ソフト)が整っていなければ意味がなく、その逆もまた然りです。
なお、GMPハードの法的な最低基準は、日本では「薬局等構造設備規則」第三節に定められており、換気・清潔性・面積・保管設備などの要件が規定されています。ISO22716は、これを上回るレベルの管理体制を求めるものと位置づけられます。
化粧品GMPと「医薬品GMP」「GQP」「GVP」の違い
OEMメーカーを選ぶ際、GMP以外にも「GQP」「GVP」「ISO」といった似た言葉が出てきて混乱することがあります。経営者として、以下の違いは押さえておきましょう。
化粧品GMPと医薬品GMPの違い
| 比較項目 | 化粧品GMP(ISO22716) | 医薬品GMP(GMP省令) |
| 法的位置づけ | 業界の自主基準 | 厚労省令による法的義務 |
| 対象 | 化粧品・医薬部外品の一部 | 医薬品・医療機器 |
| 要求レベル | 比較的柔軟 | 極めて厳格 |
| 認証機関 | 民間機関が認証(プライベート認証) | 厚労省・PMDAの査察 |
つまり、医薬品GMPは「法律で義務」、化粧品GMPは「業界での推奨」という違いがあります。ただし、化粧品でも自主回収や健康被害を防ぐために、GMPへの準拠は実務上ほぼ必須と考えて良いでしょう。
GMP・GQP・GVPの関係性
化粧品の品質・安全を担保する制度は、実は「GMP・GQP・GVP」の3つがセットで機能しています。
| 略称 | 正式名称 | 役割 |
| GMP | Good Manufacturing Practice (適正製造規範) | 製造現場(工場)での品質管理 |
| GQP | Good Quality Practice (品質管理基準) | 製造販売業者(ブランド側)が工場のGMP遵守を監督 |
| GVP | Good Vigilance Practice (製造販売後安全管理基準) | 市販後の安全性情報の収集・評価・対応 |
OEMを活用して化粧品ブランドを立ち上げる場合、「製造販売業者」であるブランド側はGQP・GVPの遵守責任を負います。GQPに基づき、委託先の工場がGMPを遵守しているかを監督する責任があるのです。「OEMに任せているから大丈夫」では済まないため、信頼できるGMP体制のパートナー選びが重要になります。
ISO9001・FSSC22000との違い
関連する他の認証規格も整理しておきましょう。
| 規格名 | 対象・役割 |
| ISO22716 | 化粧品の「製造プロセス」の質を保証する国際規格 |
| ISO9001 | 業種を問わない「品質マネジメントシステム」の国際規格 |
| FSSC22000 | 食品・サプリメントの「食品安全」を保証する国際規格 |
サプリメント(健康食品)のOEMも検討される場合は、FSSC22000の認証がある工場を選ぶと安心です。
経営者がGMP取得工場を選ぶべき4つの具体的メリット
価格の安さだけで工場を選んでしまうと、後から大きな代償を払うことになりかねません。GMP取得工場には、経営上の明確な「利点」があります。
1. 「自主回収」という最悪のリスクを最小化できる
厚生労働省が公表する医薬品等回収関連情報を見ると、化粧品の自主回収理由は「成分の配合ミス」「不純物の混入」「表示ミス」が目立ちます。
GMP工場では、すべての製造工程が記録(バッチ記録・手順書の遵守)されているため、人為的なミスが入り込む隙を徹底的に排除しています。自主回収が発生すれば数千万円〜数億円規模の損失になり得るため、このリスク回避効果は絶大です。化粧品OEMで失敗する企業の共通点としても、「品質管理体制が不十分な工場を選んだこと」が挙げられます。
2. ブランドの「信頼」を営業の武器にできる
40代・50代の感度の高い消費者は、成分だけでなく「どこで作られているか」を厳しくチェックしています。
「国際規格ISO22716(化粧品GMP)準拠の国内工場で製造」という一文は、パッケージやLP(販売ページ)において、他社との圧倒的な差別化要因になります。
3. 海外展開がスムーズになる
将来的にベトナムやタイ、中国といったアジア圏、あるいは欧米への輸出を考える場合、ISO22716の証明書が求められるケースがほとんどです。
特にEUでは化粧品規則(EC No 1223/2009)によってISO22716準拠が実質的に義務化されており、ASEANも化粧品指令(ACD)で同様の要求があります。最初からGMP工場で作っておくことで、ビジネスチャンスを逃しません。
4. 大手取引先・卸への販路拡大が可能になる
ドラッグストアチェーン、バラエティストア、大手ECモールといった販路への卸取引では、GMP認証の有無が納入条件となっているケースが増えています。
D2C販売からスタートしても、ブランドが成長すれば必ず「卸取引」の話が出てきます。その時に「GMP工場で作っていない」ことが判明すると、最大のビジネスチャンスを逃すことになります。
ISO22716認証取得までの流れ
自社でもGMP認証について理解を深めたい経営者様のために、認証取得までの基本的な流れもご紹介します。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
| ① | 17要求事項の理解と自社ギャップ分析 | 1〜2ヶ月 |
| ② | 手順書・記録書の整備(文書化) | 3〜6ヶ月 |
| ③ | 教育訓練・試験運用 | 2〜3ヶ月 |
| ④ | 内部監査の実施 | 1ヶ月 |
| ⑤ | 第三者認証機関による審査 | 1〜2ヶ月 |
| ⑥ | 是正対応・認証取得 | 1〜2ヶ月 |
全体で9ヶ月〜1年以上の期間と、コンサル費用や審査費用を含めて数百万円〜のコストがかかるのが一般的です。そのため、自社で取得するのではなく、最初からGMP取得済みのOEMメーカーに製造を委託するのが現実的な選択となります。なお、OEMを委託する場合の化粧品OEM全体の費用・予算の考え方については、別記事で詳しく解説しています。
「GMPだから安心」で終わらせない、もう一つのチェック項目
実は、「GMP認証を持っていること」と「魅力的な製品を作れること」は別問題です。
GMPはあくまで「工場の規律」を整えるものです。しかし、化粧品ビジネスで成功するには、その規律の上に「処方のクリエイティビティ」が必要です。
OEMメーカー選びのチェックリスト|確認すべき5つの質問
候補となるOEMメーカーに対して、以下の5つを必ず質問してみてください。回答内容で、本物の実力が見えてきます。このチェックリストに明確に回答できないメーカーは、GMP体制が実質的に運用されていない可能性があります。
- ISO22716(化粧品GMP)は「取得」ですか、「準拠」ですか?
- 年間の自主回収・リコール実績はどれくらいですか?
- 小ロット生産でもGMP基準は同等に適用されますか?
- 水を極力使わない処方や、特殊成分にも対応可能ですか?
- 製造記録(バッチ記録)の提示・共有は可能ですか?
化粧品GMPに関するよくある質問(FAQ)
まとめ:GMPは「ブランドを守る盾」であり、「成長への土台」
化粧品GMP(ISO22716)は、単なる工場のルールではなく、貴社の「ブランド価値を守る盾」であり、同時に「事業成長の土台」です。
- 一定の品質を維持し、自主回収などのトラブルを防ぐ
- 顧客に対し、客観的な「安心の証」を提示できる
- 将来の海外進出や大手取引へのパスポートになる
- 17の要求事項を満たすGMP体制が「攻めた処方」を可能にする
これから化粧品事業を立ち上げる経営者様は、見積書の金額だけでなく、ぜひ「GMPに基づいた管理体制があるか」「ISO22716に準拠・取得しているか」という視点を持ってください。
「どの工場が自社に合っているかわからない」「成分にもこだわりたいが、安全面も妥協したくない」という方は、製造から販売戦略までワンストップでサポートする私たちに、まずはお気軽にご相談ください。貴社の想いを、最高の形にするお手伝いをいたします。
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